2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

農業と文学

日本の近代っていうのは「個人が口をきいてもいい」ってことになったと青年達が思った時代だと思うんだ。それだから、みんな不器用に一生懸命口きいて“近代文学”なんてものが生まれたと思うんだけどさ、不思議っていうのは、ここに農民出身の作家っていうの…

中島京子「戦前という時代」

『朝日新聞』2014年8月8日より。適宜省略した。 私は、準備中の短編小説のために、戦後まもないころの出版物をあれこれ調べていて、プロレタリア作家・徳永直の「追憶」という文章に出くわした。「文藝春秋」1946年11月号に掲載されたその随筆は、敗戦…

鷲田清一「折々のことば」692

こうの史代『この世界の片隅に』の登場人物のセリフから引用の後、筆者は続ける。 気がつけば、時代は悪いほう、悪いほうへと流されている。それに抗うのは難しい。が、それ以前にそれに気づくのはさらに難しい。日々の暮らしの中に生まれる些細な変化、そこ…