熊本ライフ

坂口䙥子のラジオドラマ

古本屋で手に入れた『熊本放送』1963年8月号に坂口䙥子の随筆「私と熊本放送」が載っていた。RKK(Radio Kumamoto Kabushikikaisya)創立10周年を記念した各方面の著名人による寄稿中の一篇。 熊本放送劇団の第1回放送が、坂口の「妻の旅路」というラジオ…

“町の本屋さん”の存在価値

『東洋経済新報』2018年9月30日、中村陽子氏の記事「札幌の小さな本屋が見せた大きな「奇跡」 くすみ書房のオヤジが残したもの」より。 くすみ書房は札幌市内にあった、“町の本屋さん”という呼び方がぴったりの書店。二代目店主の久住邦晴氏は、経営不振による…

レヴィ=ストロース「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」

通勤途中の坂道で、珍しい鳥の鳴き声を聞いた。今まで聞いたこともないような張のある声で、残念ながら種類までは分からなかったが、季節の移り変わりを感じた。帰宅後、歳時記を繰ってみたが、やはり分からない。「早春に平地で囀り始め、気温の上昇にとも…

佐川光晴『牛を屠る』

この本を読み始めたきっかけは一本のテレビ番組である。 くまもと県民テレビ(KKT)製作で、日本民間放送連盟賞優秀賞も受賞した「現場発!第41回 “いのち”を伝える 元食肉解体作業員の挑戦」がそれだ。ここで登場する元作業員の坂本義喜さんは、現在は各地の…

久保田義夫「魂の中の死」―植民地社会の縮図

久保田義夫の作品集『魂の中の死』(1972)を読んだ。年末の古書セールで買ったものだ。奥付の著者略歴によれば1917年宮崎県生まれ、41年京城帝国大学法学部卒業後、47年ラバウルより帰還。59年に歴史小説集『黄色い蝶の降る日に』を刊行、『詩と真実』『九…

句会(2016・10・2)

親は親子は子で高きに登りけり 先師の六道詣り此方より 蟷螂が心の臓食む月の末 ガリレオの心動かす月今宵 いぼじりのかもとどかぬ鉄扉かな

句会(2016・3・11)

夕雨や二人静が序を踏みし 子猫らの生命荒ぶる古畳 川音をしんしんとかむ木の芽和え 桜湯の底に沈んでいることば サイレンを間遠に聞いてまた三月

句会(2016・11・5)

大銀杏城の根方にうつろ棲む 秋ぽかり昨日と今日の段差踏む 秋涼し「四月」のままのカレンダー 老木一人更地の庭に茸老ゆる 山稜の遠きを照らす秋日かな

三島由紀夫「花ざかりの森」の自筆原稿発見

以下は『朝日新聞』2016年11月11日の記事。 http://www.asahi.com/articles/ASJCC5G4VJCCULZU00C.html 作家・三島由紀夫(1925〜70)が16歳のときに初めて筆名で書いたデビュー作「花ざかりの森」の自筆とみられる原稿が、熊本市内で見つかった。原…

塚本晋也監督「野火 Fires on the Plain」

本作は昨年の公開時から気になっていたものの見逃していた。去る18日にDenkikanでリバイバル上映会があり、塚本監督のトークショーも併せて行われるというので、万難を排して見に行った。 映画「野火 Fires on the Plain」オフィシャルサイト 塚本晋也監督…

句会(2016・1・29)

季題は「初夢」。 初夢やノラにも吉や来るらん スニーカーどんどの灰を踏み均す うつつなく箸にかからぬ雑煮餅 罫線や去年の塵を払いのく くるくると傀儡繰る糸狂いつつ 最後の「傀儡」が新年の季語だとは知らなかった。角川書店の『合本俳句歳時記』にはこ…

北京で発行されていた『月刊毎日』熊本市内の古書店で発見

以下は朝日新聞2016年1月6日の記事より。 http://www.asahi.com/articles/ASHDK6FCSHDKUCVL026.html 第2次大戦末期、日本占領下の中国・北京で刊行されながら、存在が歴史に埋もれていた日本語総合誌が見つかった。タイトルは「月刊毎日」。確認された計8…

句会記録

季題は「かたつむり」。 でで虫やFausut(ファウスト)のまだ一行目 夜語りに祖母の隠した梅酒かな

句会第二十三回

季題は「柚子」。 妻病みて柚子は梢に暮れ残る 落葉寄せ小径はどこへ行ったやら 掘り立の藷を洗えばあかね色 郁子の実の種噛み当てた顔しかめ顔 「バカヤロー」念仏のごと舌凍ゆ

句会第二十二回

季題は「蟋蟀」。 蟋蟀や地球の影を仰ぎ見る(月蝕に) 曾祖母のここより嫁ぐ蔦紅葉 病棟の窓より高し秋茜 水澄んで豆腐の角も際立てり 佳き人を訪ねし後の金木犀

句会第二十一回

季題は「稲妻」。 いなつるび炉心に炎赤々と 蓑虫や昨日と同じ軒にをり 黒ぶどうむく指先の甘さかな 敬老の日にぢぢばばはスマホ買う 団栗が散歩のたびに増えている

句会第二十回

季題は「鰯雲」。 阿蘇谷の真ん中に立つ鰯雲 完全犯罪企むうちに休暇果つ まるまると肥えゆく猫と猫じゃらし 新豆腐あいつも結婚するってさ 秋燕祖父は比島にて死せり

句会第十九回

季題は「七月(文月)」。 文月や川面に流る朱に黄色 窓枠に倚りて手を振る林檎の香 子燕はパサージュ触れる高さまで 梅雨明くるわが子の補助輪取ってより 鬼灯に封じたものを覗く母

句会第十八回

季題は「トマト」。都合により三句のみ投句。 傷口もめいっぱいなりプチトマト 夏帽子似合わぬ年齢(とし)になりにけり 花みかん祖母の地下足袋干す横に

句会第十七回

季題は「五月」。 みどり児の力余って五月かな 巨大迷路あきらめかけて夏の空 夕立ちに猫も目刺しも爺婆も 夜祭りに風鈴売りもいるらしき うつろなる繭の音のもつなげきかな

ブックフェスティバルの季節がやってきた!

昨年に引き続き、今年も熊本ブックフェスティバル「本熊本bon kuma hon」2014が開催。 セキュリティチェックが必要です 会期は5/16〜5/25で、本にまつわる様々な興味深いイベントが各所で行われる。今年のトークショーのゲストは歌人の穂村弘氏。最近たまた…

句会第十六回

季題は「風光る」 制帽のリボン駆けりて風光る 遠足の帰りのバスのしじまかな 日溜まりは桜餅ほどの重さ 新しき一人住居に春の塵 食堂のにぎわいもよし復活祭

句会第十五回

季題は「猫の恋」 仮定法時限爆弾恋の猫 ぶらんこが漕ぎ戻るまでの永さかな 春雨に言問いたげな象の鼻 春寒し包んだ耳のしじまかな 亀が啼き地軸もぐわらり傾きぬ

句会第十四回

季題は「七草」。 息災の値引きを待ちて七日粥 凶事の名残点々と実朝忌 初刷りが黄変してる祖父の居間 どこまでも廊下の続く白泉忌 破魔弓をもろてに女の子また重し

句会第十三回

季題は「雪」。 初雪の遠さをはかり耳すます 初霜を念入りに踏む子らの頬 しわぶきの届く狭さに二人居て

坂口䙥子のこと

坂口䙥子(さかぐちれいこ 1914〜2007)に関する研究発表を終えた。八代に生まれ、台湾に渡って結婚し、作家として楊逵や張文環から評価された。敗戦前後を台湾先住民の居住地である〈蕃地〉で過ごし、戦後、熊本に帰郷してからそれらを舞台にした小説を次々…

句会第十二回

季題は「時雨」。 白頭翁しぐれて重き荷を背負う 星は冴えレジュメは白紙夜の底 団欒の果てて自室の息白し 漱石忌文も開かず黙りゐて 神の留守思はぬ名前言うてみる

句会第十一回

季題は「紅葉」。 初紅葉まだ恥知らぬ頬を染む 天窓へ垂直に降ってくる銀河 肝腎の文句が化けて出る夜長 秋風はレンズとレンズの隙間吹く 夫婦茶碗絶妙に隔てて枝豆もむく

古書籍即売会へ行く@鶴屋

今年も古書籍即売会のシーズンがやって来た!! てか忘れてた。古本屋さんで、店主さんと他のお客さんとの会話を小耳にはさんで思い出したのだ。 会場は鶴屋本館8F。今回は熊本マンガミュージアムプロジェクトとも連動しているらしく、奥に熊本ゆかりの漫画…

句会第十回

季題は「彼岸花」「流れ星」(いずれも秋)。 ひとを打ちし我が手は朱し彼岸花 星墜ちて地に還りたいと願う むき玉子呑み下しかねて初嵐 かなかなの啼くまで待っているこども 彼岸花立ち笑ひたる夕木立