2017-01-01から1年間の記事一覧

石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』

ヒトラーのようなレイシストが巨大な大衆運動のリーダーとなって首相にまで上りつめた経緯や、ヴァイマル共和国の議会制民主主義が葬り去られ、独裁体制が樹立された過程、さらにナチ時代のユダヤ人の追放政策が未曽有の国家的メガ犯罪=ユダヤ人大虐殺(ホ…

「カズオ・イシグロ 文学白熱教室」

ノーベル文学賞受賞に合わせて再放送されたのを見ることができた。 この記事は削除されました |NHK_PR|NHKオンライン 最初にイシグロは「私達はなぜ小説を読むのか」「自分はなぜ小説を書くのか」という、小説の存在意義を問いかけ、6つのテーマに沿って…

香月泰男「1945」「私のシベリヤ」

辺見庸『1★9★3★7』で引用されていた香月泰男の文章「私のシベリヤ」が収められた立花隆『シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界』を手に入れた。 1969年、当時29歳だった著者が、58歳の香月の元へ足繁く通い、生い立ちから応召、シベリヤ抑留、帰国までを聞き取…

ダグラス・スミス『憲法は、政府に対する命令である。』

日本国憲法施行70年に当たる今年の5月1日、安倍晋三首相は「この節目の年に必ずや歴史的な一歩を踏み出す」と宣言し、改憲に向けての具体的な行動を起こす姿勢を見せた*1。周知のように自民党は、2012年に日本国憲法改正草案を発表しており、首相も最高顧問…

橋本治「誰が彼女を殺したか?」

橋本のこの有吉佐和子論は、個人的な交流のエピソードを交え、彼女の急死直後にマスコミで出回ったスキャンダル(「笑っていいとも!」テレビジャック事件のこと。現在ではテレビ局側の依頼によるヤラセだったことが分かっている*1)への反駁という形を取り…

徳永直「追憶」震災下の流言と虐殺

先日(4/24)触れた中島氏の文章は、熊本地震より前に書かれたものである。この時、関東大震災時と同じ醜悪なデマが出回ったことは、私達の社会に根深く巣食う排外主義を改めて意識させた(幸い現地でこのデマに動かされた人はあまりいなかったように思う。…

農業と文学

日本の近代っていうのは「個人が口をきいてもいい」ってことになったと青年達が思った時代だと思うんだ。それだから、みんな不器用に一生懸命口きいて“近代文学”なんてものが生まれたと思うんだけどさ、不思議っていうのは、ここに農民出身の作家っていうの…

中島京子「戦前という時代」

『朝日新聞』2014年8月8日より。適宜省略した。 私は、準備中の短編小説のために、戦後まもないころの出版物をあれこれ調べていて、プロレタリア作家・徳永直の「追憶」という文章に出くわした。「文藝春秋」1946年11月号に掲載されたその随筆は、敗戦…

鷲田清一「折々のことば」692

こうの史代『この世界の片隅に』の登場人物のセリフから引用の後、筆者は続ける。 気がつけば、時代は悪いほう、悪いほうへと流されている。それに抗うのは難しい。が、それ以前にそれに気づくのはさらに難しい。日々の暮らしの中に生まれる些細な変化、そこ…

久保田義夫「魂の中の死」―植民地社会の縮図

久保田義夫の作品集『魂の中の死』(1972)を読んだ。年末の古書セールで買ったものだ。奥付の著者略歴によれば1917年宮崎県生まれ、41年京城帝国大学法学部卒業後、47年ラバウルより帰還。59年に歴史小説集『黄色い蝶の降る日に』を刊行、『詩と真実』『九…