戦争

豊下楢彦『昭和天皇・マッカーサー会見』

昭和天皇・マッカーサー会見 (岩波現代文庫 学術 193) 作者:豊下 楢彦 岩波書店 Amazon 読了日2023/09/03。昭和天皇とマッカーサーの会談をめぐっては、『マッカーサー回想記』(1964)に記された有名な“美談”がある(以下は豊下著による)。つまり、天皇は…

藤原彰『餓死した英霊たち』

餓死した英霊たち (ちくま学芸文庫) 作者:彰, 藤原 筑摩書房 Amazon 読了日2019/11/21。 自身中国戦線へも従軍した筆者は、「日本軍の戦没者の過半数が戦闘行動による死者、いわゆる名誉の戦死ではなく、餓死であった」という衝撃的な事実から、なぜそのよう…

東京オリンピックと戦時下日本の共通性

文春オンライン2018/07/31の辻田真佐憲氏の記事「「暑さはチャンス」なぜ東京オリンピックは「太平洋戦争化」してしまうのか?」より。 猛暑の日本列島で、東京オリンピックはいよいよ「太平洋戦争化」しつつある。五輪組織委員会の森喜朗会長は、インタビュ…

山崎雅弘『[増補版]戦前回帰 「大日本病」の再発』

〔増補版〕戦前回帰 「大日本病」の再発 (文庫) [ 山崎雅弘 ]価格: 946 円楽天で詳細を見る 第二次大戦下の日本について批判的に検証した本は枚挙にいとまがない。だが本書の特徴は、当時刊行された文献をできるだけ多く引用し、そこにどのようなロジック…

香月泰男「1945」「私のシベリヤ」

辺見庸『1★9★3★7』で引用されていた香月泰男の文章「私のシベリヤ」が収められた立花隆『シベリア鎮魂歌―香月泰男の世界』を手に入れた。 1969年、当時29歳だった著者が、58歳の香月の元へ足繁く通い、生い立ちから応召、シベリヤ抑留、帰国までを聞き取…

中島敦と軍歌

辺見庸『完全版 1★9★3★7』上を読んでいると、最初の方に「海ゆかば」の話が出てくる。筆者はその旋律に「なんかただごとではない空気の重いうねりと震え」を感じ、「ニッポンジンのからだに無意識に生理的に通底する、不安で怖ろしい、異議申し立てのす…

伊勢崎賢治『本当の戦争の話をしよう』

筆者は建築家を目指して早稲田大学建築学科に進んだが、スラム街の建物に心惹かれてインドへ留学したことがきっかけでソーシャルワークの道に入り、NGOでスラム住民の居住権獲得運動を組織した。その後、内戦の激化したアフリカのシエラレオネの武装解除…

塚本晋也監督「野火 Fires on the Plain」

本作は昨年の公開時から気になっていたものの見逃していた。去る18日にDenkikanでリバイバル上映会があり、塚本監督のトークショーも併せて行われるというので、万難を排して見に行った。 映画「野火 Fires on the Plain」オフィシャルサイト 塚本晋也監督…

NHK「九軍神〜残された家族の空白〜」

NHKで真珠湾攻撃で戦死した「九軍神」の遺族のその後にスポットを当てた、興味深いドキュメンタリーをやっていた。以下は番組紹介のHPより。 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/1614/1077207/index.html 「九軍神」とは、昭和16年12月8日の真珠湾…

加藤周一「それでもお前は日本人か」

加藤周一『夕陽妄語』で紹介されているエピソード。加藤は戦時中の日本を振り返って次のように言う。 昔一九三〇年代の末から四五年まで、日本国では人を罵るのに、「それでもお前は日本人か」と言うことが流行っていた。「それでも」の「それ」は、相手の言…

北京で発行されていた『月刊毎日』熊本市内の古書店で発見

以下は朝日新聞2016年1月6日の記事より。 http://www.asahi.com/articles/ASHDK6FCSHDKUCVL026.html 第2次大戦末期、日本占領下の中国・北京で刊行されながら、存在が歴史に埋もれていた日本語総合誌が見つかった。タイトルは「月刊毎日」。確認された計8…

戦後70年談話の歴史語り

去る8月14日に安倍首相による総理大臣談話が出された。閣議決定された「総理大臣談話」は、個人的見解を述べた「総理大臣の談話」と異なり、日本政府の公式見解として内閣が変わっても引き継がれるものという*1。つまり戦後70年談話は、単に日本政府の見解…

戦争を個人の出来事に取り戻す

大岡昇平『レイテ戦記』が戦争を「兵士」の視線で描くことに徹しているという先日の感想を書いた後、それを補足するような西谷修へのインタビューを見つけたので、ここに紹介する。IWJ Independent Web Journal 2015.4.27から。 「自由」と「戦争」をめぐっ…

戦争を語る文体――大岡昇平『レイテ戦記』

大岡昇平『レイテ戦記』を読んだが、単なる事実の羅列ではなく、戦争を文学において捉えるための一貫した方法意識に貫かれているのに驚いた。 それは簡単にいえば「兵士」の目線で戦争を書くということである。自作を語った「『レイテ戦記』の意図」(『大岡…

戦争と認識されなかった戦争が「泥沼化」を招いた

満州事変から日中戦争に至る経緯を調べていて、下記の記述にぶつかった。文中の橋川とは橋川文三のことだ。 多くの日本人にとっての戦争とは、あくまで故国から遠く離れた場所で起こる事件と認識されていた(中略)橋川はいう。考えてみれば、三七年七月に勃…

国民の「生命」を守るという大義名分を掲げない侵略や戦争があるだろうか

加藤前掲書によれば、満蒙について「国民的生存」のため必要であるとする議論は、1929年の世界恐慌で現実味を帯びるようになった。前満鉄副総裁・松岡洋右が「満蒙は我国の生命線である」と主張したのは1931年である。 それに先立つ1914年、中国学者の内藤湖…

山室信一「『満州国化』する日本」

まだ読後感をまとめる余裕はないが、とりあえずメモ。山室信一「『満州国化』する日本」(『朝日新聞』2014・1・10)より。 岸と安倍さんは発想がよく似ています。2人とも多元的な勢力の存在が嫌いのようですね。権力が一元化されていないと、物事がうまく…

戦争前夜に―中野重治「司書の死」

子供に甘かったマルクスが、ふたりの娘から冗談に問われて答えていることがある。「あなたの好きな仕事はなんですか。」「本食い虫になることだ。」こう答えている。しかし彼は、「あなたの好きな徳行は?」と問われて、「質朴だ。」と答えている。「あなた…