まだ読後感をまとめる余裕はないが、とりあえずメモ。山室信一「『満州国化』する日本」(『朝日新聞』2014・1・10)より。
岸と安倍さんは発想がよく似ています。2人とも多元的な勢力の存在が嫌いのようですね。権力が一元化されていないと、物事がうまく進まないと考える。
特定秘密保護法と、岸の日米安保条約改定も重なって見えます。安保反対のデモが国会を取り巻いていたとき、『国会周辺は騒がしいが、銀座や後楽園球場はいつも通りである。私には声なき声が聞こえる』と岸は言いました。おそらく安倍さんはそれを思い浮かべていたのではないか。今度も騒いでいるのは国会の周りの少数派だけで、背後には声なき多数派が自分を支持している、だから一部の反対を押し切ってでも法案を通すことが自分の政治家としての歴史的使命だ、と。
もともと日本人は、国家というのは与えられたものだという意識が強いんです。欧米では国家は人々が契約でつくるという意識があるのですが、日本では国体が連綿と続いてきたとされて、人がつくる余地がない。明治憲法も新しくつくったのではなく、あくまでも『皇祖皇宗ノ遺訓』を明文化したにすぎないと説かれました。しかし、これは明治以後に『創られた伝統』といえます。
安倍さんの国家観は、自然主義的とでも言いましょうか、国はあくまで自然にあったもので、しかも国家主導は正しいという発想です。戦後レジームだけが否定すべきもので、それ以前の体制は『美しい国』だったと。国家は美しい国土という伝統の中にあって、人がつくるものではない。
もともと存在した国が、戦後の自由主義や個人主義などの思想によって汚されてきた。汚れを除けば、美しい国を取り戻すことができるはずだと。その汚れの元凶が今の憲法なのでしょう。
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