俳句

ひらのこぼ『俳句がうまくなる100の発想法』

文庫 俳句がうまくなる100の発想法 (草思社文庫) 作者:ひらの こぼ 草思社 Amazon 読了日2018/08/04。 「裏返してみる」に始まり「なにも言わない」に終わる100の俳句の型はどれも実践的で、またそれぞれの例句と、そこに付された1~3行程度の鑑賞が簡にし…

『17音の青春 2018 五七五で綴る高校生のメッセージ』

17音の青春 2018 五七五で綴る高校生のメッセージ (単行本) 作者:学校法人 神奈川大学広報委員会 角川文化振興財団 Amazon 読了日2018/08/18。 「高浜虚子の提唱した「俳句には季語がなければいけない」という考え方は過去のものであろう。そういう教…

姜琪東『身世打鈴』

身世打鈴(シンセタリョン) 作者:姜 〓東 石風社 Amazon 読了日2019/10/20。 1997年初版・発行所石風社。作者の姜琪東(カン・キドン)は1937年高知生まれ、97年より福岡在住。「あとがき」に「俳句という表現形式による一人の在日韓国人の自叙伝」であり「パ…

小川軽舟『俳句と暮らす』

俳句と暮らす (中公新書) 作者:小川 軽舟 中央公論新社 Amazon 読了日2023/02/22。 1961年生まれの筆者は本書刊行時(2016)55歳。団塊世代の後発で、就職時を新卒で83年と想定すると、バブル世代の恩恵は受けなかった。ただ就職氷河期(1991~)には既に30…

レヴィ=ストロース「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう。」

通勤途中の坂道で、珍しい鳥の鳴き声を聞いた。今まで聞いたこともないような張のある声で、残念ながら種類までは分からなかったが、季節の移り変わりを感じた。帰宅後、歳時記を繰ってみたが、やはり分からない。「早春に平地で囀り始め、気温の上昇にとも…

句会(2016・10・2)

親は親子は子で高きに登りけり 先師の六道詣り此方より 蟷螂が心の臓食む月の末 ガリレオの心動かす月今宵 いぼじりのかもとどかぬ鉄扉かな

句会(2016・3・11)

夕雨や二人静が序を踏みし 子猫らの生命荒ぶる古畳 川音をしんしんとかむ木の芽和え 桜湯の底に沈んでいることば サイレンを間遠に聞いてまた三月

句会(2016・11・5)

大銀杏城の根方にうつろ棲む 秋ぽかり昨日と今日の段差踏む 秋涼し「四月」のままのカレンダー 老木一人更地の庭に茸老ゆる 山稜の遠きを照らす秋日かな

句会(2016・1・29)

季題は「初夢」。 初夢やノラにも吉や来るらん スニーカーどんどの灰を踏み均す うつつなく箸にかからぬ雑煮餅 罫線や去年の塵を払いのく くるくると傀儡繰る糸狂いつつ 最後の「傀儡」が新年の季語だとは知らなかった。角川書店の『合本俳句歳時記』にはこ…

句会記録

季題は「かたつむり」。 でで虫やFausut(ファウスト)のまだ一行目 夜語りに祖母の隠した梅酒かな

句会第二十三回

季題は「柚子」。 妻病みて柚子は梢に暮れ残る 落葉寄せ小径はどこへ行ったやら 掘り立の藷を洗えばあかね色 郁子の実の種噛み当てた顔しかめ顔 「バカヤロー」念仏のごと舌凍ゆ

句会第二十二回

季題は「蟋蟀」。 蟋蟀や地球の影を仰ぎ見る(月蝕に) 曾祖母のここより嫁ぐ蔦紅葉 病棟の窓より高し秋茜 水澄んで豆腐の角も際立てり 佳き人を訪ねし後の金木犀

句会第二十一回

季題は「稲妻」。 いなつるび炉心に炎赤々と 蓑虫や昨日と同じ軒にをり 黒ぶどうむく指先の甘さかな 敬老の日にぢぢばばはスマホ買う 団栗が散歩のたびに増えている

句会第二十回

季題は「鰯雲」。 阿蘇谷の真ん中に立つ鰯雲 完全犯罪企むうちに休暇果つ まるまると肥えゆく猫と猫じゃらし 新豆腐あいつも結婚するってさ 秋燕祖父は比島にて死せり

句会第十九回

季題は「七月(文月)」。 文月や川面に流る朱に黄色 窓枠に倚りて手を振る林檎の香 子燕はパサージュ触れる高さまで 梅雨明くるわが子の補助輪取ってより 鬼灯に封じたものを覗く母

句会第十八回

季題は「トマト」。都合により三句のみ投句。 傷口もめいっぱいなりプチトマト 夏帽子似合わぬ年齢(とし)になりにけり 花みかん祖母の地下足袋干す横に

句会第十七回

季題は「五月」。 みどり児の力余って五月かな 巨大迷路あきらめかけて夏の空 夕立ちに猫も目刺しも爺婆も 夜祭りに風鈴売りもいるらしき うつろなる繭の音のもつなげきかな

句会第十六回

季題は「風光る」 制帽のリボン駆けりて風光る 遠足の帰りのバスのしじまかな 日溜まりは桜餅ほどの重さ 新しき一人住居に春の塵 食堂のにぎわいもよし復活祭

句会第十五回

季題は「猫の恋」 仮定法時限爆弾恋の猫 ぶらんこが漕ぎ戻るまでの永さかな 春雨に言問いたげな象の鼻 春寒し包んだ耳のしじまかな 亀が啼き地軸もぐわらり傾きぬ

句会第十四回

季題は「七草」。 息災の値引きを待ちて七日粥 凶事の名残点々と実朝忌 初刷りが黄変してる祖父の居間 どこまでも廊下の続く白泉忌 破魔弓をもろてに女の子また重し

句会第十三回

季題は「雪」。 初雪の遠さをはかり耳すます 初霜を念入りに踏む子らの頬 しわぶきの届く狭さに二人居て

句会第十二回

季題は「時雨」。 白頭翁しぐれて重き荷を背負う 星は冴えレジュメは白紙夜の底 団欒の果てて自室の息白し 漱石忌文も開かず黙りゐて 神の留守思はぬ名前言うてみる

句会第十一回

季題は「紅葉」。 初紅葉まだ恥知らぬ頬を染む 天窓へ垂直に降ってくる銀河 肝腎の文句が化けて出る夜長 秋風はレンズとレンズの隙間吹く 夫婦茶碗絶妙に隔てて枝豆もむく

句会第十回

季題は「彼岸花」「流れ星」(いずれも秋)。 ひとを打ちし我が手は朱し彼岸花 星墜ちて地に還りたいと願う むき玉子呑み下しかねて初嵐 かなかなの啼くまで待っているこども 彼岸花立ち笑ひたる夕木立

句会第九回

季題は「晩夏」。 じゃんけんのグーを忘れてきた晩夏 見下ろす我をかまきりがおどかしてをる 冷蔵庫のじゃがいも芽吹く残暑かな 長き夜にページの尖りゆく倦怠 花火玉落ちたしじまを息つめる

句会第八回

季題は「ゼリー」。 ゼリーに陽を封じて飛行船見に行く おぼつかぬ手で願い書く星祭 角毎に子らたわむるる地蔵盆 河童忌に洗う穂先の水黒き 孕み妻の腹に掌翳す原爆忌

句会第七回

季題は「虹」。空梅雨が終わって水不足の心配はなくなったが、日々雨は少しうんざりだ(勝手なもん)。 親虹の閉じきらぬ弧を指で描く →「親虹」は造語で、二重虹の外側の虹を、親に見立てました。場合によっては綺麗な二重のアーチを描くこともあるようです…

句会第六回

遅ればせながら5月の句会の記録である。季題は「初夏」。 ガラス越しに初夏をためらう微炭酸 →上五の位置関係があいまい。はじけそうではじけない雰囲気は出ているので、最初を工夫しては、とのこと。 日焼子を抱けば潮の香微かなり。 バス停で素足伸ばせば…

句会第五回

季題は「蝶」。自分で言い出したのにめちゃくちゃ難儀した。 蝶の昼娘転(まろ)びて残像す →「まろぶ」という優しい表現は合っているが、「残像す」は少し硬いのではという意見。多分「残像」が使いたかったんでしょうね。ていうか、困ったら娘ネタに走りす…

句会第四回――付けたり:映画「恋は五・七・五!」感想

季題は「桜」。オーソドックスだけど、いざ作るとなると難しい。 入園日爺は桜も連れ帰る →助詞「も」が効いているとの評。 図書館の余熱冷まして白木蓮 →本好きらしい句とのこと。県立図書館前の風景ですね。 啄木忌隣で家を売る電話 →「○○忌」という季語は…