2016-01-01から1年間の記事一覧

星野智幸「文学に政治を持ち込め!」(『図書新聞』)

小説家・星野智幸が青山ブックセンターで行ったトークイベントの記事が『図書新聞』2016年12月10日に掲載されていた。過去の読書記録を見ると、2006年に『ロンリー・ハーツ・キラー』読んでいた。当時まとめた作品の概要と感想を、多少改めて掲載する。 内容…

中島敦と軍歌

辺見庸『完全版 1★9★3★7』上を読んでいると、最初の方に「海ゆかば」の話が出てくる。筆者はその旋律に「なんかただごとではない空気の重いうねりと震え」を感じ、「ニッポンジンのからだに無意識に生理的に通底する、不安で怖ろしい、異議申し立てのす…

句会(2016・10・2)

親は親子は子で高きに登りけり 先師の六道詣り此方より 蟷螂が心の臓食む月の末 ガリレオの心動かす月今宵 いぼじりのかもとどかぬ鉄扉かな

句会(2016・3・11)

夕雨や二人静が序を踏みし 子猫らの生命荒ぶる古畳 川音をしんしんとかむ木の芽和え 桜湯の底に沈んでいることば サイレンを間遠に聞いてまた三月

句会(2016・11・5)

大銀杏城の根方にうつろ棲む 秋ぽかり昨日と今日の段差踏む 秋涼し「四月」のままのカレンダー 老木一人更地の庭に茸老ゆる 山稜の遠きを照らす秋日かな

「社会性」についてのメモ

古い読書記録から。 ひとは異なった共同体に同時に住むことは大いにあり得る。であるとすれば、ひとの主体的立場は単一に決定されているのではなく、多重に決定されているはずである。ひとは、娘であり、母であり、隣人であり、買い手であり、あるいは教師で…

三島由紀夫「花ざかりの森」の自筆原稿発見

以下は『朝日新聞』2016年11月11日の記事。 http://www.asahi.com/articles/ASJCC5G4VJCCULZU00C.html 作家・三島由紀夫(1925〜70)が16歳のときに初めて筆名で書いたデビュー作「花ざかりの森」の自筆とみられる原稿が、熊本市内で見つかった。原…

伊勢崎賢治『本当の戦争の話をしよう』

筆者は建築家を目指して早稲田大学建築学科に進んだが、スラム街の建物に心惹かれてインドへ留学したことがきっかけでソーシャルワークの道に入り、NGOでスラム住民の居住権獲得運動を組織した。その後、内戦の激化したアフリカのシエラレオネの武装解除…

塚本晋也監督「野火 Fires on the Plain」

本作は昨年の公開時から気になっていたものの見逃していた。去る18日にDenkikanでリバイバル上映会があり、塚本監督のトークショーも併せて行われるというので、万難を排して見に行った。 映画「野火 Fires on the Plain」オフィシャルサイト 塚本晋也監督…

NHK「九軍神〜残された家族の空白〜」

NHKで真珠湾攻撃で戦死した「九軍神」の遺族のその後にスポットを当てた、興味深いドキュメンタリーをやっていた。以下は番組紹介のHPより。 http://www.nhk.or.jp/docudocu/program/1614/1077207/index.html 「九軍神」とは、昭和16年12月8日の真珠湾…

句会(2016・1・29)

季題は「初夢」。 初夢やノラにも吉や来るらん スニーカーどんどの灰を踏み均す うつつなく箸にかからぬ雑煮餅 罫線や去年の塵を払いのく くるくると傀儡繰る糸狂いつつ 最後の「傀儡」が新年の季語だとは知らなかった。角川書店の『合本俳句歳時記』にはこ…

加藤周一「それでもお前は日本人か」

加藤周一『夕陽妄語』で紹介されているエピソード。加藤は戦時中の日本を振り返って次のように言う。 昔一九三〇年代の末から四五年まで、日本国では人を罵るのに、「それでもお前は日本人か」と言うことが流行っていた。「それでも」の「それ」は、相手の言…

北京で発行されていた『月刊毎日』熊本市内の古書店で発見

以下は朝日新聞2016年1月6日の記事より。 http://www.asahi.com/articles/ASHDK6FCSHDKUCVL026.html 第2次大戦末期、日本占領下の中国・北京で刊行されながら、存在が歴史に埋もれていた日本語総合誌が見つかった。タイトルは「月刊毎日」。確認された計8…