中島敦

円城塔『文字渦』

文字渦(新潮文庫) 作者:円城塔 新潮社 Amazon 読了日2022/11/12。 「昔、文字は本当に生きていたのじゃないかと思わないかい」という境部さんの言葉は、「文字の霊などというものが、一体、あるものか、どうか」という中島敦「文字禍」のリフレイン。中島…

中島敦「巡査の居る風景」:意識されない支配の中で

辺見庸がブログで中島敦に触れていた。既に該当記事は消去されているようだが、中島が一高生時代に書いた習作「巡査の居る風景 ―一九二三年の一つのスケツチ―」についてだ。 ◎「巡査の居る風景」のことなど 「巡査の居る風景」よむ。またおどろく。たじろぐ…

中島敦と軍歌

辺見庸『完全版 1★9★3★7』上を読んでいると、最初の方に「海ゆかば」の話が出てくる。筆者はその旋律に「なんかただごとではない空気の重いうねりと震え」を感じ、「ニッポンジンのからだに無意識に生理的に通底する、不安で怖ろしい、異議申し立てのす…

中島敦の転居

九州大学の過去問を見ていたら、2010年は黒宮一太『ネイションとの再会』からの出題だった。冒頭でハイデガー研究者ウーテ・グッツォーニの著作『住まうこととさすらうこと』を引用している。 さすらうことは、動いていること、途上にあることである。さすら…