坂口䙥子のこと

  坂口䙥子(さかぐちれいこ 1914〜2007)に関する研究発表を終えた。八代に生まれ、台湾に渡って結婚し、作家として楊逵や張文環から評価された。敗戦前後を台湾先住民の居住地である〈蕃地〉で過ごし、戦後、熊本に帰郷してからそれらを舞台にした小説を次々と発表。ために「蕃地作家」と称された。「蕃婦ロポウの話」「猫のいる風景」「風葬」で三度芥川賞候補となるが、受賞にはいたらず。本格的作家活動を目指し上京、晩年まで旺盛な創作を続けた。
  彼女に関しては、霧社事件との関わりや、近年では1940年代台湾文学の読み直しから注目されてきたが、戦後の作品をまとめて読むと、女性のジェンダー規範に強く違和感を持っていたという印象が残った。しかも、その規範にうまく適合できずに自死する女性を描くことが多い(「煙草」「おスミさんのこと」など)。その当たりにこめられた苛立ちを、うまく掬い取ることができたら、というのが今回の発表の趣旨だった。
  参加してもらった方々には本当に感謝。また学生や院生の発表を久しぶりに直に聞いて、その緻密な論証手続きは刺激になった。

  最近の『熊本日日新聞』11月15日〜17日が小笠原淳氏の「作家坂口䙥子の半生」という記事を載せている。
  坂口れい子 - Wikipedia
HP「西日本女性文学案内」でも立項されている。http://www.geocities.jp/hiwaki1/nishijyobunnOP/gennkou/KMsakaguchireiko.htm