『太宰治全集1』

思い立ってちくま文庫版『太宰治全集』を読み始めた。

太宰治全集〈1〉 (ちくま文庫)

太宰治全集〈1〉 (ちくま文庫)

第一巻には、第一小説集『晩年』(砂子屋書房 昭11・6)所収の諸作品と、昭和10〜11年に発表された作品が収められている。このちくま文庫版全集は、関井光男による充実した書誌解題が付されていて便利である。所収作品は以下の通り。関井氏解題に基づき、初出を記す。

  • 単行本『晩年』所収作品

「葉」(『鷭』昭9・4)/「思い出」(『海豹』昭8・4)/「魚服記」(『海豹』昭8・3)/「列車」(『東奥日報』昭8・2・19)/「地球図」(『新潮』昭10・12)/「猿ヶ島」(『文学界』昭10・9)/「雀こ」(『作品』昭10・7)/「道化の華」(『日本浪漫派』昭10・5)/「猿面冠者」(『鷭』昭9・7)/「逆行」(『文芸』昭10・2)/「彼は昔の彼ならず」(『世紀』昭9・10)/「ロマネスク」(『青い花』昭9・12)/「玩具」(『作品』昭10・7)/「陰火」(『文芸雑誌』昭11・4)/「めくら草紙」(『新潮』昭11・1)

  • その他

「ダス・ゲマイネ」(『文芸春秋』昭10・10)/「雌に就いて」(『若草』昭11・5)/「虚構の春」(『文学界』昭11・7)/「狂言の神」(『東陽』昭11・10)

このように挙げて見ると、「魚服記」「地球図」「猿ヶ島」「雀こ」「ロマネスク」のような虚構性の強い、ストーリーテラーとしての才を発揮した作品が、初期から書かれていることに気づく。