漱石記念館と手紙

こちらに来て、ようやく四ヶ月目にして夏目漱石記念館へ行った。
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中央高校の近くにある。真っ昼間にいったせいで、死にそうな暑さだったが、中にはいると開けっぴろげで蚊取り線香が焚いてあり、田舎の親戚の家に来たみたいだった。

玄関左手の印象的な洋館は、漱石在住中はなく、後の所有者が増築したものとのこと。

漱石からくり人形というのがあって、紐を引くと愉快なギミックが作動する。

愉快といえば、漱石は神経質なイメージがあるが、ある意味常人とは異質なユーモアを持ち合わせていたように思う。例えば三好行雄編『漱石書簡集』(岩波文庫)の中の、次のような文面。

あの『心』という小説のなかにある先生という人はもう死んでしまいました。名前はありますがあなたが覚えても役に立たない人です。あなたは小学の六年でよくあんなものをよみますね。あれは小供がよんでためになるものじゃありませんからおよしなさい。あなたは私の住所をだれに聞きましたか。

『こころ』の「先生」に名前があったというのは本当か。この手紙を書いた小学生は、どんな感想を送ったのか。それにもまして、子供に対して、大まじめにこんな手紙を書いた漱石の態度が不思議で笑える。