平日行けなかった鶴屋の即売会にようやく行ってきた。熊本関連の郷土書が充実していたのはもちろんだが、それ以外にもいろいろ掘り出し物があった。
本日の収穫
・中野重治『鷗外 その側面』(ちくま学芸文庫)
・有吉佐和子『海暗』(角川文庫)
・堀田善衛『時間』(新潮文庫)
・五味川純平『人間の条件』(岩波現代文庫)
ほかに中野『本とつきあう法』、深沢七郎『笛吹川』もあったが見送り。『淵上毛銭全集』(1万円)があったり、荒木精之の本が多かったりと、熊本ゆかりの作家の著書が多いのも、京都と違っていて面白かった。
付記
荒木精之の名前を知ったのは、石牟礼道子『苦海浄土』の一節。作者が水俣病写真展開催を、当時の橋本彦七市長に頼みこんだ。以下、それに続くやり取り。
―あんた何者かね?
―はあ、あの、シュフです。あの、水俣病を書きよります。まあだほんのすこし。豚もやしないよりますけん、時間がなくて。家の事情もいろいろ……。
―ふむ、キミ荒木精之を知っとるかね。
―知ってます。
―いや荒木君はキミを知っとるかネ。
―ご存知です。
―つまりキミは荒木氏からみれば、熊本では何番目くらいの文士かね?
―さあ? はあ、文士だなんて、ぜんぜん、その……。
そしてあっさり断わられる。荒木精之とは熊本文壇の族長的な存在である。つづけて熊本日日新聞社長に手紙を出す。いんぎんていねいな返事がきて断わられる。
高飛車な市長と、作者のとぼけた口調のちぐはぐさがおかしい。この記述からは、単なる地方文壇のボスだと思っていたが、なかなか興味深い履歴の人物だ。
荒木精之 - Wikipedia
また神風連研究者として、熊本へ取材に来た三島由紀夫を案内したらしい。以下の西法太郎氏の論考が参考になった。
三島由紀夫研究会メルマガ (2007年05月07日発行) | 三島由紀夫の総合研究 - メルマ!