『太宰治全集6』

太宰治全集〈6〉 (ちくま文庫)

太宰治全集〈6〉 (ちくま文庫)

  この巻には「右大臣実朝」が入っている。高校時代に読んで以来、最も好きな作品の一つだ。かつて実朝の近習を勤めていた「私」が、昔を振り返って聞き手に語るという形である。結末に向かって、実朝・私・公暁三人の人間関係が緊張していく様が、とても鮮やかに描かれている。最後を私の語りではなく、当時の人々の反応を示す古典の引用によって締めくくっているのもいい。

「鉄面皮」(『文学界』1943・4)/「赤心」(『新潮』1943・5)/『右大臣実朝』(書き下ろし単行本 錦城出版社 1943・9・25)/「作家の手帖」(『文庫』1943・10)/「佳日」(『改造』1944・1)/「散華」(『新若人』1944・3)/「雪の夜の話」(『少女の友』1944・5)/「東京だより」(『文学報国』1944・8)/「新釈諸国噺」(「貧の意地」『文芸世紀』1944・9、「人魚の海」『新潮』1944・10、「裸川」『新潮』1944・1、「義理」『文芸』1944・5、「女賊」『月刊東北』1944・11、単行本 生活社 1945・1・27)、「竹青」(『文芸』1945・4)