資料展「検閲の基準 ―発禁になった本、ならなかった本―」(千代田区立図書館)

  千代田区立図書館で興味深い展示を行っている。
戦前の出版検閲を語る資料展「検閲の基準 ―発禁になった本、ならなかった本―」
http://www.library.chiyoda.tokyo.jp/guidance/display_naimushoitaku2012.html

戦前の日本では、内務省があらゆる出版物の検閲を行っていました。検閲にあたっては、「安寧秩序紊乱」と「風俗壊乱」という二つの大きな柱があり、それぞれに検閲の基準が設けられていました。この基準は曖昧さを含んだものであり、実務レベルではこれに拠りながらも、出版物の目的や読者層、その時機の社会情勢なども考慮しながら、検閲官が一冊一冊判断していました。
この展示では、検閲の基準と、さまざまな要因によって判断が揺れ動いた事例をパネルで紹介します。また、千代田図書館蔵「内務省委託本」をはじめとする検閲の実態を窺うことができる貴重な本や資料を展示します。

【会期】2012年12月24日(月)〜2013年3月17日(日)
【会場」千代田図書館 9階 展示ウォール
【監修】浅岡邦雄氏(中京大学文学部教授)
【協力】国立国会図書館東京大学総合図書館、明治大学図書館、安野一之氏(国際日本文化研究センター共同研究員)、牧義之氏(日本学術振興会特別研究員)、新井正人氏(慶応義塾大学大学院生)
【問合せ先】千代田図書館 電話5211-4289

  太宰は「十五年間」で次のように書いている。

昭和十七年、昭和十八年、昭和十九年、昭和二十年、いやもう私たちにとっては、ひどい時代であった。(中略)私の或る四十枚の小説は発表直後、はじめから終りまで全文削除を命じられた。また或る二百枚以上の新作の小説は出版不許可になった事もあった。しかし、私は小説を書く事は、やめなかった。もうこうなったら、最後までねばって小説を書いて行かなければ、ウソだと思った。