県立図書館で『日本談義』を見る

  県立図書館へ本の返却と資料調査に行った。このブログで何度か触れた『日本談義』の現物を閲覧するためである。
  文化総合雑誌『日本談義』は、地方文化振興を目的として1938年5月創刊された。編集発行人は荒木精之である。1945年6月まで刊行され、敗戦を挟んで1950年12月復刊、1982年4月をもって終刊した。戦前戦後併せて44年間にわたり、通巻463号を出した。

  ちょうど昨年末に天野屋さんで荒木編『日本談義総合索引目録』(日本談義社 1982・5)を購入した(年末セールで4,000円だった!)。この『総合索引目録』は、タイトル通り、全号の記事を「特記」「人物」「文学」「歴史」「文化」「社会」「自然」「芸術」「雑纂」など内容ごとに分類したもの。総目次ではないので、一冊ごとの概要はつかみにくいが、目指す分野の記事がすぐ見つけられるというメリットがある。また、この目録の各分類にちょっとした解題が付いていて便利である。大変な労作だ。
  冒頭の「刊行者のことば」では、目録作成に当たった荒木の苦心談が書かれている。特に「折角、目録をつくっても、日本談義を持っている人には便利でも、持たない人にはどう利用できるか」と考え、熊本県立図書館・熊本市立図書館・国会図書館日本近代文学館に全巻揃うようにしたということには頭が下がった。もちろん自身が手がけた雑誌への愛着もあるだろうが、このような地道な作業を忘れるべきではない。

  そういうわけで、県立図書館には戦前の創刊号から揃っており、戦前・戦後両方の号が見たかった私には都合が良かった。保存状態は良い方だが、戦前の号はノドの部分が割れかけており、複写は少し危ぶまれた。図書館員の方によれば、デリケートな状態の資料は、デジカメを持ち込んで撮影しても良いそうだ。
  現物を手にとってさらに驚嘆したのは、復刊号から設けられた「文化消息欄」である。大きなイベントの他、熊本ゆかりの文化人の動向が細かに報告されており参考になった。
  熊本の文化史・文学史を考える際には『日本談義』を参照するのが必須だと思った。

  帰りがけに別室で古本販売のようなスペースを見かけたので、フラフラ足を踏み入れたら、「本活フェア」と称してブックリサイクルフェアを行っていた。図書館や各自の不要の本を持ち寄り、無料配布するわけだ。なんと素敵な催し! 閉館間際だったが、ぎりぎりまでねばって巌谷大四『非常時日本文壇史』を得て帰った。
https://www.library.pref.kumamoto.jp/event/24honkatsu.pdf
  フェアは明日までだそうだ。江湖の士よ、急がれたし!