小野不由美『残穢』

 読了日2023/01/03。
 本文に解説のある触穢の思想は日本の古典文学でお馴染みだが、本作では触れたら感染する怪異を、「キャリア」(p.250)「ウィルス」(p.256)という表現から分かるように、感染症と同じ性質を持つものとして描く。2012年発表の作品だが、パンデミック下の現在、良からぬものの伝染が拡大する恐怖は一層リアリティがあった。そして感染のルーツを辿る過程で明らかになるのは、風化する地域共同体や炭鉱といった近代史の影。