シャーリイ・ジャクスン『丘の屋敷』

 読了日2020/09/21。

 香川雅信『江戸の妖怪革命』では、近代における怪異のパラダイム転換について「妖怪や幽霊は、近世においては人間の外部にあって『見えるもの』であったが、近代においては人間の内面のはたらきによって『見てしまう』ものへと変わったのだ」(p267-8)と簡潔に述べる。本作でも怪異の中心はエレーナにある。抑圧された彼女の内面に“屋敷”が働きかけ、一線を越える方へ誘き寄せる。作品はエレーナ目線で書かれ、つまり読者は彼女に同一化するのに、それが少しずつ逸脱していく。こんな恐いことがあるだろうか。