リチャード・マシスン『地獄の家』

 読了日2021/11/21。

 古書即売会落手本。1973年映画化。昔深夜に偶々テレビを付けたら、ちょうど一番クライマックスで、今は亡き富山敬さんの吹き替える霊能者フィッシャーが、敵のベラスコに悪罵を投げつけるシーンだった。それが印象に残ってずっと読みたかった本。テレビ放送では(収録当時は可でも)台詞に放送禁止用語が多く、やたらと音が切れていたのも覚えている。

 『丘の屋敷』から影響を受けた(同書解説)本作は、全く同じ道具立てを使いながら、見事に先行作品の本歌取りとなっている。『丘の屋敷』が屋敷と共鳴してしまう人間の内面を描いているのに対して、本作では死後の魂に否定的な科学者が、最初から怪異現象を心理学的に解釈する。だがそれこそが、屋敷に潜む悪霊によるミスリードだったのだ…。超自然がテーマでも、ちゃんとロジックを通してミステリのような面白さを発揮できるという好例。