香川雅信『江戸の妖怪革命』

 読了日2021/04/26。

 近世の妖怪ブーム分析にフーコー『言葉と物』のアイデアを持ってきた点が本書のポイント。かつては妖怪の出現が凶兆を意味するなど「記号」としての働きを持っていたが、近世になり本来の意味作用を失い、その形態に注目され、自由に組み合わされ消費される「表象」となった。その背景となった妖怪イメージの様々な流通形態を、図鑑・手品・見世物・玩具など具体的に取り挙げ分析する。さらに近代では催眠術や神経など「人間」の知覚認識能力と結びつけて妖怪が論じられるようになった。

 サブカルでも妖怪は今なお有力な共通資源だが、作中世界にどう位置付けるかは様々。文字通り民俗的存在として自明のものとして扱うか、人間の想像力が何らかの形で実体化したものとして扱うか。その意味では、妖怪をテーマにした創作のアイデアとしても役立つのでは。見越入道が「化物の頭」だったとは知らなかった。そのジャンルでの“お約束”を通してキャラ立ちしていくという現象は、現代の「データベース消費」(東浩紀)などにも通じる。