柴田錬三郎『柴錬立川文庫一 猿飛佐助 真田十勇士』

 読了日2020/08/07。

 単行本は1962年文芸春秋新社から(その前に『オール読物』に掲載?)。司馬遼太郎「風神の門」の連載(『東京タイムズ』1961~62)もあり、同時期に二人の時代小説家が「猿飛佐助」をリライトしていた。どちらも十勇士をろくろく書かないのは勿体ないが、手垢の付いた題材として敢えて外したのだろう。

 本作で前面に出てくるのは正負両様の“出生の秘密”。親として、我が子が別人の血を引いているのではと、疑心暗鬼に陥る者。逆に、子として思いがけぬ出自を知り、暗黒面に落ちる者などが多々いる中、主人公・佐助は血の束縛に囚われず飄々と自由に生きる。彼の幼時を知る百地三太夫の、「嬰児であったおぬしを肩へのせた白雲斎に、わしは、江州で出会うている。瘤をせおうたおぬしを眺めて、わしが、育つまい、と云うと、白雲斎め、ひどう慍(おこ)り居った。……よう育った」という台詞は熱い。

 余談だが、「柴錬立川文庫」シリーズは複数の出版社から出ており、同じ題名でも収録作が異なったりするので、どのように揃えたらよいか頭を抱える。