「芸術はすべて心である〜知られざる画家不染鉄の世界〜」

 3月4日のNHK「日曜美術館」は、「芸術はすべて心である〜知られざる画家不染鉄の世界〜」と題して「幻の画家」と称された不染鉄(1891-1976)の特集だった(2月の再放送らしい)。

去年の夏、東京で初めての回顧展が開かれ、美術関係者の注目を集めている日本画家、不染鉄。人生の足跡を明らかにしながら、不染鉄の郷愁あふれる幻想の風景世界を紹介する
去年の夏、東京で初めての回顧展が開かれ、美術関係者の注目を集めている日本画家、不染鉄(1891〜1976)不染鉄は人生の中で出会った風景を、生涯繰り返し描いた。生まれ育った寺院のイチョウの木。漁師として暮らした伊豆大島の村落と海。奈良・西ノ京に住んで見た古都の情景。番組では、晩年不染鉄と絵葉書の交流をした女性などの証言によって、人生の足跡を明らかにしながら、不染鉄の郷愁あふれる幻想の風景世界を紹介

日曜美術館 - NHK

 東京・小石川の寺の住職の息子に生まれながら、不良少年となり、伊豆大島・京都・奈良・東京・また奈良と転々と居を変えながら、それぞれの土地を愛着を込めて緻密な描写で描き続けた。流浪には何か根深い動機があったのだろうか。種田山頭火や尾崎放哉などの放浪の詩人を思わせるが、彼らのように窮死することなく、84歳まで生きた。 


 「写実主義による写生を好まず、学校の図書館で『一遍上人絵伝』を模写していた」*1ということからも分かるように、現実の風景をモチーフにしていても、静謐な光で満たされた寂光土を思わせる。富士山を中央した絵は参詣曼荼羅のようだ。絵の周りに文字を配するのも、絵巻的手法を連想させる。

*1:星野桂三・星野万実子『忘れられた画家シリーズ 31 「没後30年・不染鉄遺作展」図録』(星野画廊 2007)Wiki「不染鉄」より孫引き