黒史郎『ムー民俗奇譚 妖怪補遺々々』

 読了日2019/04/24。

 本書は、作家で竹書房の怪談文庫の常連でもある筆者が、様々な民俗誌や地方の民話集から、興味のアンテナに引っかかった話を丹念に拾い集めた怪談集である。

 出所の多くが民話や民間伝承であり、狸や狐も登場するが、筆者の収集した物語は、いずれもどこか禍々しい(筆者自身の挿絵も相俟って)。夜道で出会うもの・凶兆となるもの・会うと不幸になるもの・訪うものなど、民俗的というよりは、現代的な怪談(『新耳袋』や『不安の種』のような都市伝説的・不条理的な)と似通ったテイストである。これらはある種の短さ・断片性と切り離せない。長編では、物語になってフィクション性がましてしまうからだろうか。結末以降をスッと切り落としたような短さが好まれているように思われる。日本文学史には、まだまだ多くの怪談奇談が眠っているのだろう。