小野不由美『ゴーストハント1 旧校舎怪談』

 読了日2022/12/26。

 解説で池澤春菜が述べているように、超常現象を扱うオカルトと論理性を重んじるミステリは意外に相性が良い。この怪異/事件の原因/犯人は?と追及していく面白さが共通するからだ。本作は名探偵ならぬ霊能者が各自の推理を元に怪現象を解明/祓おうとする。互いの推理は相容れず、一方が正しければ他方は誤りという排他的な関係にある。こうして事件は、複数の推理が我こそ真実というゴール目指して競合する闘技場となる。オカルトでも論理性を徹底すると優れたミステリになるのだという好例。これが魅力の第一点。

 第二は少女小説風味。ツンデレの美少年と相思相愛になる(かどうかはまだ分からないが)のは、あくまで普通の女の子。最初の発行レーベルからすれば読者の感情移入しやすさが理由だろうが、特別な人間でいたいという願望を抱いた他の登場人物と比べると、普通の女の子であることを肯定した作品と読める。

 第三は、女子高生が怪談に興じる冒頭から分かるように、人はなぜ怖い話に惹かれるのかという省察。怖い話を楽しむコツは100%信じるのでも疑うのでもない、中立の立場を保持し続けることだ。それはなぜ人は虚構を求めるのかという根源的な問いである。真実でなかったとしても、怖いという感情は残る。「あとからどんなに理屈を知っても、遡って怖かったことまで消すことはできないの」(p.286)。そして学校の怪談を語り継ぐことは、世代を越えたコミュニケーションに繋がる。「ずーっと語り継ぐお話があるほうが楽しいもん」(p.265)