川上徹也『独裁者の最強スピーチ術』

 ヒトラー橋下徹、二人のスピーチから「人を動かす物語の黄金律」を分析する。簡単に言えば、(1)欠落を抱えた主人公が、(2)巨大な敵や困難を打ち破り、(3)輝かしい成功を手にする、というサクセスストーリーである。単純だが、演説という形で肉声を伴って上演されると、強い力で聴衆に働きかける。着眼点は面白いが、筆者の本業はコピーライターであって、歴史学の専門性には乏しい。ナチのプロパガンダヒトラー演説の効果に関しては、その過大評価も含めて、しっかりした歴史学研究を参照したいところ。