澤村伊智『ぼぎわんが、来る』

 読了日2023/06/09。

 「訪問者」「所有者」「部外者」の3章構成で、章ごとに視点が変わる。ある人物の言動が、他者からは全く異なって見えるのが妙味。その互いに食い違う心の「スキマ」が強大な魔を呼ぶ。実話怪談でやはり子供の頃の体験談として、死をもたらす来訪者の話があったのを思い出した。本作も怖いが、怪異事件と絡まりながら、一人一人の人物像が掘り下げられていき、それぞれの心理に感情移入できるのが、やはり文学の強み。  

 2018年に中島哲也監督で「来る」として映画化。原作における視点人物の移り変わりを、主人公の変移としてうまく処理しながら(妻夫木聡黒木華松たか子岡田准一という主役級の俳優達を惜しげもなく連続投入!)、クライマックスでは原作で軽くスルーされた個所を膨らませて、一大呪術バトルとしてのスペクタクルを見せた。