小泉八雲『日本の面影 ラフカディオ・ハーンの世界』

 読了日2013/03/09。
 ニューオリンズ、松江、熊本、東京と移り住みながら、日本から次第に失われていくものに目を向け、ペンの力で形に表そうとしたハーン。両親に捨てられ片目の視力も失った彼は、アメリカという西洋社会に居場所のない異人でもあった。そんな孤独な彼が、日本で暖かい家族と居場所を得る。だが当時の日本は、西洋列強に肩を並べるため、自然を恐れるつつましやかさや利他心を切り捨て、合理主義と利己心の支配する国になろうとしていた。ハーンの死が日露戦争の始まった年というのは象徴的だ。